8 之を知る者は、之を好む者に如かず

本日の講話では、「之を知る者は、之を好む者に如かず」という論語をご紹介いたします。この意味は、「これを知るという者は、これを好きであるという者には及ばない。」ということです。

私たちがよく耳にする言葉として、「好きこそものの上手なれと」いう言葉があります。好きなものに対しては熱心に努力するので、上達が早いということです。私たちは、嫌いなことは、積極的にやろうという意欲がわきませんが、好きなことには、時間のたつのも忘れるほど熱中するものです。仕事を好きになるということは、熱中して知識や技術を覚え、上手に仕事ができるということになります。

仕事に限らず、趣味の料理や写真、ドライブやサイクリングなど、なんでも構わないのですが、自分が好きでやっていることには、お金も時間も使って知識や技術を身につけていきます。

そして、この句の後に続く言葉があります。それは、「之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」です。二つの句を一つにして、「之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」となります。

 

この言葉は、仕事を極めるための3つの段階を示したものと考えることができます。仕事をするうえでの第一段階は、まず、仕事を知るということです。はじめての事業を担当することになった場合、その事業の価値や内容を知り、目標を達成するための具体的なプロセスを学びます。こうした一連の学びを通して仕事の仕事を知ることができます。

次に、仕事を好きになる第2段階へと進みます。仕事を好きになるためには、一生懸命に仕事をしなければなりません。中途半端に仕事をしていると、仕事に対する不満がでてきたり、嫌になったりします。どんな仕事でも、一生懸命になって取り組むからこそ好きになるのです。初めから仕事が好きという人は、あまりいないでしょう。仕事を一生懸命することによって、仕事が面白くなって、仕事が好きになっていくのです。

そして、3つ目の段階が仕事を楽しむということです。仕事が楽しい人は、傍から見て大変そうに見えても、本人は仕事が楽しいので、苦になりません。朝起きて、「さあ、これから仕事ができるぞ」と思って、わくわくして出勤するようなものです。仕事をすることによって、毎日の生活に張りが出てくるという感覚です。

例えば、ランナーがフルマラソンを走っている姿をみると、息が上がって苦しそうに見えるときもありますが、本人は、平気なのです。走ることが楽しい

のですから、息が苦しいからやめるということはありません。この苦しみも併せて楽しいのです。そして、ゴールした時には、何にも代えがたい達成化と感動を得ることができるのです。仕事もそんなものではないでしょうか。

 

仕事の楽しさというのは、苦しみと隣り合わせなのかも知れません。実際に仕事をしていれば、楽しいことだけではありません。失敗したり、うまくいかない場合は、落ち込んだり、苦しむこともあるでしょう。しかし、「見るもの」、「聞くこと」、「すべての事」を研修と受け止め、「失敗から学ぶ」という考え方を持つことによって、自らを成長させることができるのです。こうした学びを繰り返していると、仕事を楽しむ境地に至ることができます。今、自分が味わっている苦労は、自分を磨くための試練であると考えることによって、それを乗り越えた時にひと回り大きな人間に成長しているのです。それが、「苦しみ」が「楽しみ」に変わる瞬間です。

私たちは、毎日の生活の中で、仕事をしている時間が多くを占めています。この時間を楽しい時間に変えることが、毎日を楽しくしてくれます。人生は、毎日の積み重ねですから、毎日を楽しむことができれば、有意義な人生を送ることになります。私たちに平等に与えられた1日24時間のなかで、仕事に費やす時間を楽しみたいものです。

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