福祉的活用の実績がある「空き家」には、住宅以外に店舗や公共施設も含まれていますが、ここでは住宅に絞って述べていきます。

総務省が5年ごとに実施している住宅・土地統計調査では、空き家を「賃貸用」「売却用」「別荘等の二次的住宅」「その他の住宅」の4種類に分類しており、一般に「ここは空き家だ」と認知されるケースのほとんどは「その他の住宅」(以下、「その他空き家」と呼ぶ)です。
2018年調査では、空き家総数849万戸に対し「その他空き家」は349万戸と41%を占めています。
2008年から10年間の変化をみると、空き家総数は757万戸から92万戸(12.1%)増加し、空き家率は13.1%から13.6%へと上昇しました。
この間、「その他空き家」は268万戸から81万戸(30.1%)増加しており、空き家全体の増加のほとんどを占めています。私たちが「空き家が増加している」と感じるのは、「その他空き家」が増えているからです。

「その他空き家」の72%は戸建であり、そのほとんどが持家であると考えられます。
戸建持家が空き家になるまでの一般的プロセスは、

  • 子どもが独立し、夫婦のみになる。
  • その後片方の配偶者が亡くなる。
  • 残された一人暮らしの高齢者が亡くなる。

という形で進みます。
このプロセスからみて、高齢者の多い地域で空き家が発生しやすいことは容易に想像できます。
しかし、空き家が発生しても、すぐにそれが相続人や購入者によって利用されれば、空き家ストックが増加することはありません。
空き家ストックが増加する傾向が続いているのは、1930・40年代生まれの規模の大きな世代が、1960・70年代を中心に取得した大量の持家から空き家が発生し、それが相続や市場取引によって継承されないケースが増えているためです。

大江 守之 慶応義塾大学 名誉教授